おじさんと生活社

けっこうなおじさんと結婚した私(27)の生活

父が女装趣味を告白してきて娘がモヤッとした話

 数年前の冬、父が女装趣味をカミングアウトしてきたときのことと、その後の心のモヤモヤについて書いておこう。

 そのとき私は都内の居酒屋で、20歳年上の彼氏(現ダンナ)と父と酒を飲んでいた。まだダンナとは入籍していなくて、父親に紹介して2回目くらいの食事だったと思う。

 両親は私が中1のときに離婚しているけど、父とは半年に1度は会っていたしハタチを超えたら一緒に酒も飲んだし、表面的には仲良くやっていた。まあ毎回なんとなく気まずかったけど。

 ダンナは父と10個も年が離れていない。音楽の話やらで意気投合して父はダンナのことをかなり気に入っているようだった。「もうそろそろ帰ろうか」と言おうとしたとき、父がニヤニヤしながらスマホの画面を私たちに見せてきた。画面には「ばってん荒川のお米ばあさんに巻き髪ロングのウィッグをつけました」みたいな父の姿があった。女装してビューティープラスした父だった。

 私はとりあえず「ハハハ」と笑っておいた。ダンナは「マジっすか〜いいじゃないっすか〜」とか言っていて、その場は完全に「父親のカミングアウトをあたたかく受け入れる娘とそのダンナ」っていう構図になった。帰り道、父は幸せそうだった。

 娘としては、長らく一緒に生活していない父親の趣味が女装でも今更ショックは受けないし、「この話職場でしたらウケるだろうなー」くらいにしか思ってなかった。女装に偏見はまったくないから。

 

 だけどこのカミングアウト以降、父の私に対する態度が変わった。それがすごくモヤッとしてるんだと思う、私。

 後日、父が週1でママをやっているというオカマバーに行ったんだけど、女装姿で私にオンナ言葉で接する父親が妙に馴れ馴れしくて。今までは離婚したことを少しは申し訳ないと思っている父親然としていて、娘の私を腫れ物を触るように扱っていたじゃないの。

 お客さんにも女装男性が何人もいて、父がその人たちに私を紹介した。

「これ、アタシの娘〜(笑)」って。

その度にカウンターの客がドッとウケたり驚いたりして、私は毎度頭を下げて「いつも父がお世話になってます」みたいなこと言わなきゃならなかった。タダでお酒飲ませてくれるから貧乏な私たち夫婦はその後も何度も店に行ったけど、いよいよ私の中で膨らむモヤモヤの収集がつかなくなってきた。

 私は父に女装趣味があるということはすんなり受け入れられたけど、あの頃、大好きな母を傷つけて、いて欲しいときにいなかった「父親としての父」のことは受け入れられていないのかもしれない。離婚のことなんてとっくに整理ついてたと思ってたんだけどな。

 カミングアウトはした方はスッキリするだろうけど、された方は誰にも言えないモヤモヤが止まらないこともあるんだよな、困ったことに。これ、カミングアウトハラスメントと呼んでいいかな。女装に罪はない。罪なのはカミングアウトを受け入れられて全てを許してもらえたと思っているキミの魂胆なのだよ。わかってるのかね。

 はい、オカマバーで嬉々として接客する父を眺めながらタダ酒飲んでたらいろいろ葛藤したよって話でした。